――痛みと深く関わる、見過ごされがちな主役
私たちが誰かに触れられたとき。
あるいは、熱いものに触れたとき。
その「感じる」という体験の最前線にいるのが、皮神経(cutaneous nerve)です。
筋肉でも、関節でもない。
皮膚のすぐ下にある第一感覚ライン。
なのに、医療やリハビリの現場ではこれまで、なぜかほとんど注目されてきませんでした。
今回は、慢性痛や触覚過敏の理解に欠かせない「皮神経」に光を当て、
その機能と、DNM(デルモニューロモジュレーティング)という新しいアプローチの可能性についてお伝えします。
皮神経とは?
皮神経とは、皮膚直下を走る末梢神経のこと。
私たちが毎日当たり前に感じている感覚――それをキャッチしているのがこの神経です。
- 触覚:軽い触れ、圧力、振動など
- 温度:冷たさ、熱さ
- 痛覚:危険信号としての痛み
皮神経は、これらの刺激をいち早く感知し、脊髄や脳へと情報を伝えます。
さらに、自律神経系や感情をつかさどる脳領域(たとえば扁桃体)ともつながっていて、
まさに身体と心を結ぶ警報装置として働いているのです。
皮神経と痛みの深い関係
多くの慢性疼痛の背景には、実はこの皮神経の「過敏化」があります。
- 軽い触れでも痛いと感じる
- 刺激がないのに痛みが続く
- 触覚が痛覚に変換されてしまう
これは、神経系――つまり脳が「これは危険だ」と誤って判断している状態。
痛みは、必ずしも組織の損傷で起こるとは限りません。
神経系の誤作動や過剰警戒によっても、痛みは作り出されるのです。
そしてこの過敏化が続くと、慢性痛の悪循環へと進んでいきます。
なぜ皮神経は見過ごされてきたのか?
- 医学書や解剖図で「皮神経」はほとんど紹介されない
- 多くの教育が「筋肉・骨・関節」に偏っている
- 「押す・動かす=効く」という発想が主流だった
でも実際には、私たちが誰かに触れるとき、
一番最初に反応するのは皮膚――皮神経なのです。
それを無視して“深層”だけを追いかけるのは、
身体を表層から見る視点を失っているとも言えるでしょう。
皮神経にどうアプローチするか?
――DNM(デルモニューロモジュレーティング)という選択
DNMは、皮神経を「ただの感覚の通り道」とせず、
神経系そのものに働きかける感覚刺激としてとらえる徒手療法です。
🧩 DNMの3つの原則:
- やさしく触れる:押さない、揉まない、痛くしない
- 表皮をずらす:皮膚に穏やかな刺激を与えることで神経に働きかける
- 神経に安心を伝える:「安全だ」と感じさせる環境をつくる
このアプローチは、痛みの根本にある神経系の過敏化や誤作動を整えることを目的としています。
つまり、「痛みの感じ方そのものを変える」ことができるのです。
まとめ:「皮神経」は臨床の見えない主役
筋肉でも、骨でも、関節でもない。
でも、私たちが触れるすべての瞬間に最初に反応するのは、皮膚――皮神経です。
この最前線のセンサーを無視するのではなく、
丁寧に読み取り、やさしく働きかける。
そんな視点は、これからの徒手療法・神経リハビリの核心になるはずです。
もしあなたが「もっと痛みにやさしく向き合いたい」と感じているなら、
皮神経に着目したDNMというアプローチが、
きっとあなたの臨床の新しい地図になるでしょう。